電気代高騰対策【その1】

”敵を知り己を知る“ ~デジタルであり、IoTに時代ですよ!😊~

これまで5回に渡って、電気代の高騰の背景と新電力の電気小売り事業者としてのあまりのいい加減さを指摘してきましたが、総括をすると、“電力の自由化”=電気代の値下げではないと言うことであり、買う自由の裏側には売る自由もあり、値下げを目論んでいた経済産業省が、「電力卸売市場」の制度設計を誤ったと一旦は結論付けます。

さあ、今回からはその対策です。1回目は、商売(交渉)の鉄則である、“相手(電気小売事業者)の儲けの仕組みを知る”です。

新電力の勃興期(高圧の電力販売)において、その代理店は言うまでもなく、新電力にすら、“蟻”の自分たちにとってみれば“象”にも近い企業規模の大手電力会社よりも、なぜ、安く電気が売れるのかをきちんと説明できる営業マンは殆ど見当たりませんでした。

また、基本的に彼らの料金体系も、従来の基本料金の単価を割引くだけで、その結果を、全体の以前の電気料金総額から割引率何%で提示すると言ったものでした。電気代のkWh単価は、大手電力会社と同一であり、こうしたことから、負荷率の低いお客様をこぞって(好んで)営業対象にしていました。そういった意味では、夜間も冷凍・冷蔵庫、ショーケースに電気が流れている食品スーパーに対しては、

数%の割引が限界でした。彼らにとっては、美味しくない業態でした😿

それがいつの間にか、大手電力や新電力間の競争激化や当初の電力卸売市場からの調達価格の今からすると信じられないくらいの低下を背景に、我々からすれば、何処で利益を上げるのかわからないくらいの割引価格でお客様の獲得に走りました。また、大手電力会社も、長期契約(と言っても、毎年の単価の見直し条項あり)を条件にこの価格競争に応じて行きました。

こうした中、これまで多くの本で書いて来ましたが、日本の電力業界の世界に冠たる儲けの仕組み(料金制度)は、総括原価方式(原価に対して利益を乗せる/燃料代の変化は全て料金に反映可能な燃料調整費)と電気料金の根幹をなす仕組みである「デマンド制」です。

これは凄い仕組みで、要するに、1年間で一番沢山の電気を使った30分間の電力量(KW)に、2,000円前後の基本料金単価を掛けたものを、電気を使う使わないに関わらず電力会社と契約をしている限り毎月支払い続けるのです。冬場しか電気を使わないスキー場や夏休み中の大学等は、担当者がお金を払うわけではなし、公共料金感覚でしたので、8月の基本料金700万円、電気使用量料金200万円と言う、異常な料金明細の月がありましたが、誰一人疑問を感じることなく支払っているのが実態でした。

また、電力会社は、自由化前までは24時間年がら年中発電をしている原発が動いており、夜間や休日の電気が余っていることから、夜間や休日の電力需要を喚起するためのプランを沢山出し、自らの電力使用量の平準化であり、負荷率のアップによる経営効率の改善に努めて来ました。

しかし、ここに来て時代が遡ったわけです。電力会社から突然の値上げであり、新電力からあるまじきことか解約を申し渡され、以前の料金でしか応じてくれない電力会社との交渉に臨まざるを得なくなったお客様は、今はデジタル技術でありIoTの時代であり、また、お客様によっては既にスマートメーターが設置をされていることから、自らの電気の使い方でありその状況を精緻にデータとして把握し、電力会社との間で、自社がどのような電気の使い方をすれば、経営効率のアップにつながるのかをきちんと電力会社に聞き、ピーク時の電気の使い方の工夫(ピークシフト)であり、稼働日や日時の変更を含めて、電力会社との間でデータを基に話し合いを重ねることです。そこには、自らの太陽光発電所の建設や電力会社との間での太陽光PPAも視野に入れなくてはなりません。

これから、電源構成に占める再生可能エネルギー(太陽光や風力発電)の比率が急速に増えて来ます。そうなって来ると、太陽光発電所がピーク時に余剰電力を出しまくる夏場の午後の時間帯には相当量の電気が余ることから、この時間帯に集中的に電気を使う約束の下、電気料金の割引率を決めると言った契約も間違いなく出て来ます。

工場にとっても、業務用の小売りチェーンにとっても電気代は大きな(仕入)原価(食品スーパーでは売上高の1.5~2.0%も電気代を支払う)であるにも関わらず、月単位でしか自らの使用状況や金額を把握していないことが最大の問題です。時間ごとにレジに何名を配置するかを決めるがごとく、時間ごとに、どの種類の電気をいくらの価格で購入するか(場合によっては、自分で作るか)の時代はすぐそこに来ていることを自覚することこそが大事です。 

“節約”で済まされる時代は終わりました。電気が足らない時代です。無駄に使っていたら、高騰を招くだけで、それは、皆さんの経営を直撃します。“敵を知り己を知れば、これ、百選危うからずや!”です。



 

一般社団法人 SDGsビジネス総合研究所

 理事長 村井哲之